家族で営む小さな農業|古民家での里山暮らし②

承け継ぐ暮らし のぎ屋 田村 大輔さん

<前回の記事はこちら→想いの詰まったこの家で|古民家での里山暮らし①

鳥取県倉吉市、市街地から少し離れた場所に佇む、広々とした大きな古民家。「承け継ぐ暮らし のぎ屋」の田村大輔(たむら だいすけ)さんのお宅へお伺いしました。

東京都ご出身の田村さんは、幼いころからよく遊びに来ていたというお祖父さまのお家で暮らすことを決め、8年前に倉吉市へ移住してこられました。昭和初期に建てられたという築90年の古民家で、幼少期に見ていた「なんでも自分で作って自分のベースで仕事をしていた」お祖父さまと同じように、お家を大切にしながらこの場所での暮らしを楽しんでおられます。

▲ 承け継ぐ暮らし のぎ屋 の田村さん。ご自宅の前にて。

お隣さんから教わったスイカ栽培

田村さんは現在、「承け継ぐ暮らし のぎ屋」として暮らしを発信しながら、農業を営んでおられます。

ご本人曰く、「ここの家に住みたいけど、農業が絶対したいわけではなかった。」とのこと。それでも農業を選んだのは、「この家に住む上で、農業をやるのが一番フィットするし、幸せを感じるだろう」と何となく思ったからなのだそうです。

そんな時に手を差し伸べてくれたのは、お隣に住んでおられたおじいちゃんでした。倉吉市はスイカ栽培に適した風土で、毎年夏になるとスイカの生産地としても賑わう地域です。「スイカ教えてあげるで」と、スイカ栽培で生計を立てておられたお隣のおじいちゃんに教わり、田村さんもスイカの栽培を始められたのです。

スイカを栽培する場所は、元々はお祖父さまが花木の栽培に使っておられた畑です。機械的にならないようにと一般のスイカ農家さんよりは小さめの規模で栽培をされているとのことでしたが、畑にご案内いただくと想像以上に広くて驚きました。これだけたくさんの数を田村さんお一人で収穫され、奥様とご一緒に出荷の手配をされるとのことで、また更に驚いてしまいました。

▲田村さんのスイカ畑。お訪ねした時期はちょうど収穫直前で、大きなスイカが沢山育っていました。

栽培を始め最初にスイカができた時には、自分の手でスイカができたことに感動してとっても嬉しかったと田村さんは当時の想いをお話しくださいました。現在は、農業協同組合への出荷もしながら、「できたものを直接食べてもらいたい」という想いもあり、オンラインショップでの販売や、鳥取市にて期間限定の「無人販売」も行っておられます。

無人販売で出されているのは、皮と実の間に薄い隙間があり、一般のスーパーマーケットで販売されているようなカットスイカにするには向かないものなのだそう。しかしそんなスイカこそ糖度が高く、現に無人販売で置いたものは近隣住民の皆様にも人気で、「次はないですか?」とのお声をいただくこともあったのだと言います。

▲鳥取市での無人販売の様子。見かけると思わず立ち止まってしまいそうです。(承け継ぐ暮らし のぎ屋 Instagramより引用) ※本年の販売はすでに終了されておられます。

無人販売なので直接お客様と顔を合わせることは少ないそうですが、SNSや口コミを通して楽しみにしてくださっているお客様のお声が届きます。「実験的にやったけど、とてもおもしろかったです!」と、直接お客様の手に渡り喜んでおられる様子を、田村さんご自身もとても楽しんでおられるようでした。

日常的に楽しめる玄米餅

夏の風物詩ともいえるスイカ。夏の期間に販売をして終了、というよりも、1年を通してお客様と関われるような機会があればと考え、田村さんがもうひとつ始められたのが「お餅」の販売でした。

鳥取へ移住して来られた頃、米農家さんの餅つき大会に参加した際に「玄米餅」を食べて感動したと言う田村さん。奥様の後押しもあり、以前から行っていたという米作りにもち米の栽培も併せて行い、収穫後の11月頃から玄米餅を中心にお餅の販売をされておられるのです。

▲お家の向かいにある加工場でお餅づくりをされています。( 承け継ぐ暮らし のぎ屋 Instagramより引用 )

「のぎ屋さんの玄米餅は美味しいよ!」と、同日にお伺いした取材先の方からの口コミもお伺いしたほど人気の商品。田村さん曰く、お正月に食べる白いお餅とはまた違って、ごはんの代わりに食べたりと日常遣いにもぴったりなのだと言います。

例年11月中旬頃~4月初め頃までは、オンラインショップや鳥取県内のいくつかのお店でも販売を行っておられるとのこと。この冬は私も絶対に食べてみたい!と意気込んでいるところです。 きっと、田村さんとご家族の皆様の温かい気持ちがこもった、やさしく美味しいお餅なのだろうなと感じます。

▲ のぎ屋さんの白餅と玄米餅。(承け継ぐ暮らし のぎ屋 Instagramより引用)

「家族でやる」をモットーに

お餅づくりのお話を伺った際、ふと気になって「こうした作業は全てお一人でされているのですか?」とお伺いしました。

スイカの収穫は基本的には田村さんがお一人で作業をされた後、ご自宅へ持ち帰り奥様とご一緒に出荷作業をされるのだそう。また、お餅づくりも奥様とお2人で加工や出荷などの作業をされているのだそうです。

「やっぱり家族でやるのがモットーなので」と田村さん。田村さんのこの言葉を聞いたときが、「そうだ、このお家での暮らしの一部として農業をされているんだった」と、私にとって、この日見せていただいたもの全てにすごく納得したような瞬間でした。なんだか、ご家族3人で出荷の作業をされている風景や、日々を楽しく過ごされている風景が想像できるようですよね。

田村さんは、「承け継ぐ暮らし のぎ屋」という屋号を付けられる際、「食べ物の中心になるような要素を入れたい」という想いがあったのだとお話しくださいました。

「のぎ」というのは、お米のもみの先にできる毛のようなものを指します。また、漢字の「禾(のぎへん)」には穀物の意味が含まれていて、「秋」「収穫」などの食べる上で大事なものを指す字に使われていることが多いため、この名前を付けられたのだそうです。

SNSで田村さんご家族の暮らしぶりを拝見し、実際にご自宅におじゃまさせていただいた今回の取材。

「承け継ぐ暮らし のぎ屋」という素敵なお名前の通り、 田村さんご家族が、お祖父さまが大切にされていたお家と、昔ながらの古き良き暮らしを承け継ぎながら過ごしておられる様子、そして1年を通して農業をすることで、生きる上で大切な食に関わりながら暮らしを楽しんでおられる様子を見せていただいたようでした。

私にとってこの日は、自分のフィールドを持って暮らしを楽しむことの魅力を再確認し、ますますのぎ屋さんファンになった1日になりました。

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承け継ぐ暮らし のぎ屋 田村 大輔さん

家族で営む小さな農業

私たちは、夫婦二人で自分たちの身の丈にあった面積、栽培方法で農業を営んでいます。
目の届く範囲で栽培するからこそ、しっかりと手をかけることができ、心に余裕を持ちながら作物に向き合える。
そうして出来上がった食べ物を、みなさまにお届けします。

ライターのコメント

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ライター

小林 遥南

スイカもお餅も、とっても美味しそう!と取材中に何度も声が出てしまいました。皆さまも是非のぎ屋さんの素敵な暮らしぶりをSNSから覗いてみてくださいね♪