〈前回の記事はこちら→種蒔きから始まる藍染め|土地がひとつになる、心地よい循環①〉
季節の移り変わりを感じながら藍を育て、縫いから染めまで全て手作業でされている「藍染工房ちずぶるー」。
柴田さんに、藍染めをする上での魅力ってなんですか?
とお伺いしたところ、
「すっごく単純です。とにかく染めて色がでる瞬間が好き。ただ、それだけ。」
何度やっても飽きることのない、藍色。
その色の美しさがご褒美であり、全ての作業が報われる瞬間。自分のやってきたことが確信となり、感動するぐらい綺麗と思えるそうです。
▲その日の気温や天気などにも左右される染めの工程。染めムラが出ないように、しきりに手を動かします。ちゃぽ、ちゃぽと水の音だけが工房内に響きます。
▲染めた後、サッと水にくぐらせるときれいな藍色に。「きれいに出ましたね」と言われる染め師の横で、私たちもハッと息をのみました。
現在、ちずぶるーは4名の主力メンバーと数名のアルバイトを中心に活動されています。みんな個性もそれぞれ、思いもそれぞれ。得意分野も違えばキャラも違う。
しかし、全員が大切にしていることがあります。
それは、「見えない部分にこそ魂を込める」ということ。
誰も見ないであろう、繋ぎ目の細かな部分、生地の裏・・・。
表がいくら綺麗に染まっていても、裏が染まっていないともう一度染め直します。一つの作品を作るのに、2日にかけて染めることもあります。
▲染め師の皆さんは、自分たちで染めたものをよく着られるそう。工房内全員が、藍染めの服を着てきて「今日は全員揃ったね」というときもあるといいます。
「誰かの宝物になるものをつくる」。
ちずぶるーのコンセプトは、染め師である彼女たちも大事に思えるものを作るということにつながっているのです。
▲爪も藍色に染まっていました。マニュキュアみたいで可愛い!
また、ちずぶるーは毎週、地元の鳥取県立智頭農林高等学校へ出向き、藍染めの授業を行っています。
生徒は、藍も一緒に育て、様々な藍染めの技法や考え方を学びます。
そして1年をかけて、智頭町内の各所にかける暖簾を制作するのです。
地域との繋がりも大切に活動されている、ちずぶるーの柴田さんや境さんたちは、こういった活動も「仕事と思ったことはない」と言われます。
ご自身の暮らしの中にすんなりと受け入れ、楽しんでおられるように見えました。
▲智頭町内にある図書館「ちえの森ちづ図書館」には、智頭農林高校の生徒の作品が飾られています。
春には畑が始まったり、夏に草取りをしたり・・・、そういった営みの中に、藍染めの全ての工程が組み込まれているようでした。受け継ぐことや残していくことを自然に受け入れているように感じられる、ちずぶるーの柴田さん・境さん。
しかし、その根底には、覚悟と強い意思が共存しています。
凛とした空気が伝わるような作品に、そういった思いの断片を感じ、「藍」のある暮らしへ思いを馳せるのでした。
▲染め体験もできます(要予約)。図柄を選んで、工房内で染めができるのでとても貴重な体験です。
▲一緒に行った相棒が体験させていただきました。世界で一つだけのハンカチ。宝ものになりました。
#鳥取 #手作り #手仕事
藍染めのお品物は、洗濯をしながら使っているうちに色合いがだんだんと変化してくるのも楽しみの一つだと思います。
自然な表情の変化を楽しみ、育てるような気持ちで一つ手に取ってみられてはいかがでしょうか。