兵庫県北部の香美町小代区。この地の山奥に、ご自身で山を開拓してキャンプ場を作っている方がおられるといいます。
それを聞いて「山って個人で開拓できるものなの?」と、そんな疑問が浮かんだ筆者。どんな方がされているのか、是非その方たちにお会いしてみたいと思いました。
今回は、山中でキャンプ場を営み自然とともに生きるご夫婦のご紹介です。
小代区の村々を抜け、勾配のある山道を登ること十数分。山陰海岸ジオパーク「新屋八反滝」からさらに砂利道を進んでいくと、険しい山道の奥に突然木々のない平坦な場所が現れます。
まるで冒険をしているような気分でたどり着いた場所、ここが今回の取材場所『おじろじろキャンプ場』でした。
▲ 上山知沙子さん(左)と上山恭平さん(右)
おじろじろキャンプ場を運営されるのは、大阪から移住してこられた上山さんご夫妻。お話を伺うとご自身で山を購入し、重機を使ったりしながら自分たちで少しずつ山を開拓してキャンプ場を作られているそうです。山の面積はなんと13万坪と、テーマパーク並の広さなんだとか。(現在キャンプ場として利用されているのはその一部)
さらにキャンプ場に到着して最初に見えてくる管理棟も、なんと図面を書いたのは知沙子さんご自身。何か建築に関わる経験があったわけではないそうですが、独学で勉強して図面を書き、電気工事士の資格を取得するなどして、自分たちで作ったというのだから驚きです。キャンプ場の整備は徐々に進められ、2021年の夏頃に待望のプレオープンを果たしました。
▲こちらが自作の管理棟。建設途中をSNSに発信していたところ、手伝ってくださる大工さんが現れたこともあったそう。
小屋の前には広大な原っぱが。山を見下ろすことができる、非常に眺めのよい場所です。
今は雨水のぬかるみを改善するため工事中ですが、平原で見晴らしがよく、テント設営も行いやすいことからご家族やキャンプ初心者に人気のエリア。山から吹き抜けてきた風がとても心地よく感じました。
▲入ってすぐのこちらは「原っぱエリア」と呼ばれます。(写真:おじろじろキャンプ場HPより)
キャンプサイトはここだけでなく、林道をさらに奥に進んだ場所にも。先ほどの原っぱとは打って変わり、奥の方にはたくさんの木々が鬱蒼と生えていました。キャンプ場とは言え、まるで森の中にいるようです。こちらの「林間エリア」はキャンプ上級者に人気の場所だそうで、鳥のさえずりを聴きながら木漏れ日の下で過ごすことができる場所。恭平さんによるとさらに切り株を引き抜いて平地を作り、森の中にテントをはれる場所をコツコツと作っておられるそうです。
さらにおじろじろキャンプ場では利用者に合わせた区画分けがされており、月極でレンタルを行っている区画も存在します。レンタルした区画内は自由に開拓することができ、毎週のように通われている利用者さんも。キャンプ好きな方にとって、楽しく過ごせる場所であることは間違いなさそうです。
▲「林間エリア」は切り株の根を抜いたり、ぬかるみに砂利を敷き詰めたり、まだまだ開拓中のエリア。森林組合さん協力のもと、整備を進めてきたのだそう。
▲あるお客さんが作っていったというチェーンソーアートのきつねさん。周りを探すと他にも木の動物たちがいました。
また、より大自然の中でキャンプを楽しんでいただけるようにと配慮し、大人6名以上の利用の場合は予約に制限をかける場合も。そのような自然の中で静かに過ごす体験を大切に思っておられるご夫妻の思いに共感し、リピーターになってくれるキャンパーさんも多いのだとか。
外灯などの明かりも一切設置していないので、何にも邪魔されずに星空が見れるところも『おじろじろキャンプ場』の醍醐味。満天の星空の下、周囲の小枝を集めて焚き火をして過ごすといったような、ロマンに溢れる夜を過ごすこともできるのです。
取材中にも上山さんご夫妻は常連のお客さんと仲良くお話をされている場面もあり、本当にキャンプ好きの方々に愛される場所を自ら開拓されてきたのだと実感しました。まだまだ開拓中であると言うこちらのキャンプ場ですが、今後はどう進化していくのか…!後編では上山さんご夫妻が大阪からこちらに移住してまで作りたいと思った、理想のキャンプ場づくりにかける思いについてのお話です。
続きはこちら→〈やりたいことを実現する決意|夫婦で山林開拓②〉
#作る人
「山を開拓している」と聞いた時はどんな屈強な方が出てくるのか…!と思いましたが、とっても素敵なご夫婦が出迎えてくださり、いい意味でとても驚かされました。キャンプ場内はまさに大自然!という感じで、この場所で過ごすとものすごくリフレッシュできそうです^^