美しい棚田が広がる、のどかな里山。兵庫県北部に位置する、香美町小代区でゲストハウスを営んでおられる、田尻 茜(たじり あかね)さんに会いに行ってきました。
昔ながらの民家が並ぶ通りの坂道を登っていくと、大きく空いた窓から、和やかに談笑をしている声が聞こえてきました。そこが今回ご紹介する茜さんがオーナーをされている「スミノヤゲストハウス」です。
外からお声かけすると「いいよ、上がってー」と、赤ちゃんを抱っこした茜さんが出迎えてくださいました。
スミノヤゲストハウスは、古民家をリノベーションしたゲストハウス。
20年程前までは地元の方が「すみのや」という名前の民宿をされていたそうです。民宿を辞められてしばらく空き家となっていた場所へ茜さんが移り住み、4年程前から運営をされています。
▲懐かしさを残しながらリノベーションされたスミノヤゲストハウス。
茜さんは、大阪生まれの神戸育ち。
特に田舎暮らしに興味があった訳ではなかったのですが大学生の時、「年に4回、香美町小代区に滞在する」というゼミを選択したのが移住のきっかけだったそう。
その時は、なんとなく選択したゼミでしたが、実際に過ごしてみると小代の人たちの懐の深さ、面白さに引き込まれていました。大学卒業後、一度は大阪で働きましたが約一年後、香美町・地域おこし協力隊の募集に申し込み移住を決意。任期の3年を経て、ゲストハウスをオープンさせました。
▲スミノヤゲストハウスの周辺。のどかな里山の風景が広がります。
「移り住むまでに、この場所に惹かれた理由はなんですか?」
とお伺いしたところ茜さんは、住んでいる人たちの全員が全員を知っているコミュニティーの濃さに面白みを感じ、その方々と仲良くなれたことが大きかった、とお話してくださいました。
大学生だった茜さんが、村の食事会に同席した際、自分よりずっと年上の方たちの会話が新鮮でとても楽しく、都会にはない温かみを感じました。
「〇〇さん家のおばあさんが最近・・」などと誰かが話だすと、「あー、あの人か・・」と、そこにいる全員が「うん、うん」とうなずきながら話を聞きます。
「話の内容はさっぱりわかりませんでした(笑)。だけど、『ああ、いいな~』と思ったんです」
と、当時を思い起こしながら教えてくださいました。
▲ゲストハウスに改装する時の様子。
▲地域の方々へ思いや構想を語り、たくさんの協力を得ることになったそうです。(写真:スミノヤゲストハウスのインスタより)
茜さんのご実家は都会の方だったため、『田舎に帰る』という感覚が分からずにいました。しかし、初めて小代に来た時から「また、ここに帰って来いよ」とおじさんたちに言われて、じんわりと心があったかくなるのが分かりました。
「これが、第二の故郷というものなのかなと、その時感じたんですよね」と茜さん。人を通じて、場所にもどんどんと愛着がわいてきたそうです。
「また帰ってこいよ」そう言ってもらえる人がいることはこんなにも、人を前向きに、やさしい気持ちにさせてくれるのですね。
素敵なお話を聞かせていただき、心がほんわりとあたたかくなりました。
第二の故郷をご自身でみつけられた茜さん。
そして、今度は茜さんがゲストハウスに泊まられたお客様に「また、ここに帰ってきてね」と言っておられるのかな・・・と、想像するのでした。
▲スミノヤゲストハウスのある地区には、うへ山という名前の山が近くにあり、そこでは棚田にてお米が栽培されています。茜さんもお米づくりに参加されているそうです。(写真:スミノヤゲストハウスのインスタより)
「日本で最も美しい村」連合にも加盟している小代。スミノヤゲストハウスの周りも、日本の原風景が広がっていました。