つながりが作る、豊かな暮らし|空と水と大地の恵み③

NPO法人自然栽培そらみずち 古谷 祥一郎さん

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そらみずちの始まり

6月某日。初夏の空気が気持ちよく感じられるある日、鳥取県・智頭町で自然栽培を行う団体「NPO法人自然栽培そらみずち」の方々を尋ねました。

私たちを案内してくださったのは、そらみずち代表の古谷 祥一郎(ふるたに しょういちろう)さん。同じそらみずちのメンバーとして自然栽培での農業に取り組んでおられる嶌田さん・前田さんをご紹介くださり、お二方の農業や暮らしについての想いやこだわりをお伺いすることができました。

最後に古谷さんが招いてくださったのは、 古谷さんの奥様が営んでおられる「野原のCAFEぽすと」。 元郵便局だった場所を利用したお洒落な空間にて、古谷さんご自身やそらみずちの活動についてなど、ゆったりとお話を聞かせていただきました。

▲現在は水曜日限定で営業されているとのこと。休業日でしたが店内にお招きいただき、古谷さんが淹れてくださった美味しい自家焙煎珈琲をいただきました。

古谷さんは、もともと智頭町のご出身。進学を機に東京へ移り住み、理工学系の大学を卒業した後には、美術品流通の業界で海外に行き絵画を買い付けたり、東京でギャラリーを持っておられたご経験もあるのだそう。約20年ほどの東京生活を経て、智頭町へ帰ってこられたとのこと。古谷さんが農業を始められたのも、Uターンで智頭町へ帰ってこられてからなのだと言います。

そらみずちは、2016年に智頭町の地域おこし戦略の一つとして、自然栽培塾を設立したことから始まった任意団体でした。というのも、当時の智頭町長が自然栽培に目を付け、「本物志向で行こう」と自然栽培の実践者である講師の方を招いて講演会を開催されていたのだそうです。それから自然栽培に興味があるメンバーで集おうとなり、団体を立ち上げられたのだと言います。そして昨年、「NPO法人自然栽培そらみずち」を設立し、よりメンバーたちが活動しやすい形へと生まれ変わったのです。

実の詰まった野菜ができるわけ

古谷さんご自身が自然栽培に興味を持ったのは、自然栽培でりんごを育てた『奇跡のりんご』の木村秋則さんの講演を聞いたこと。「そういうのを自分でもやってみよう」と、故郷である智頭町で自然栽培を始められたのだそう。

それからは、肥料ありと肥料なしでの野菜の育ち方の違いを比較をしたりと、様々な実践をされてこられたのだと言います。

例えばきゅうりを折ったとき。自然栽培で育てたものは断面を合わせるとそのまま表面張力で落ちずにいられるのだそう。古谷さん曰く、作物自体の力で育つため、断面の密度がより高くなっているからなのだそうです。

「形がいいがエネルギー量が足りないような野菜と、形が悪くても無から有を生むエネルギーを培った野菜というのは、身体の母体となる気力が違うよ。」と古谷さん。

たしかに、実際にそらみずちのメンバーである嶌田さんの畑にお伺いした際に見せていただいたお野菜も、中身がぎっしりと詰まっていて密度が高く、試食をさせていただくとその野菜が蓄えてきた力を私もいただいているような感覚がありました。

古谷さんがおっしゃったように、そらみずちの皆さんの想いは、こうして「みんな同じ方向」を向いていて、熱い気持ちで日々野菜作りに取り組んでおられるのだと実感しました。

つながりが作る、豊かな暮らし

そらみずちの代表としての活動もされている古谷さんですが、普段はご近所にある那岐駅舎の管理もされているのだそう。さらには、「いざなぎ振興協会」の取り組みとして、那岐駅舎を利用して行われている「一人暮らしをされているお年寄りの居場所づくり」も手掛けておられるのだと言います。

「どちらかというと、私はたまたまここで生まれて帰ってきた立場です。でもそれをきっかっけに那岐駅にかかわったり、自然栽培に興味があったのでそらみずちを立ち上げたり。ここに帰ってきた事がそれらにつながってきていますね。」

こうした地域の方々とのつながりや、移住をしてこられたそらみずちのメンバーとのつながりなど、様々なつながりを持っておられる古谷さん。お話を伺っていると、古谷さんにとってそれらのつながりはとても自然なことで、当たり前にあるもののようでした。

しかし、こうした人と人とのつながりこそが、智頭町で熱い想いをもって自然栽培をする方々がいることや、自然栽培ができるほどの豊かな自然が守られていること、そして他地域からの移住者が集まる魅力的なまちであることの、ひとつの理由なのではと感じられました。

▲「シェ・ベン」さんの美しいケーキたち。

帰り道に連れて行ってくださった、最近できたケーキ屋さん「シェ・ベン」。フランスご出身のパティシエ・ベンさんご家族が智頭町に移住して来られ、今年の5月に始められたのだそうです。

ここでも古谷さんは、ベンさんご夫妻ととっても気さくに、楽しそうにお話されていた姿が印象的でした。お人柄の良い古谷さんの周りに集まる、やさしい笑顔にたくさん出会った1日になりました。

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ライターのコメント

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ライター

小林 遥南

私が取材で智頭町を訪れたのは今回が初めてでした。古谷さんとご一緒させていただいたこの数時間で、このまちのたくさんの魅力に気づくことができました。私もこのつながりを頂けたことを、とっても嬉しく思います。