失敗は成功の肥やし|畑で育つ未来の人材②

やおぷろ 林さん・飯塚さん・東さん

前回の記事はこちら→〈農業は技術の総合格闘技|畑で育つ未来の人材①〉

鳥取大学の学生団体で、作物の生産・販売を行う『やおぷろ』。
多面的な学問である農業に向き合い、実践し、その経験を将来社会に出た時に役立てられる人材になるため、学生たちは学業と共に団体での活動を行なっています。

「やってみないと成功するかはわからないから、いっぱい挑戦して、いっぱい失敗できる団体にしたい」
そうおっしゃるのは『やおぷろ』創設者の林さん。今回は失敗を成功に繋げて、利益を生み出すまでに至った、彼らの奮闘記についてのお話です。

▲左から順に生産部長の東さん、団体創設者の林さん、現在団長の飯塚さん

今『やおぷろ』で生産している作物は麦と野菜。
こちらの団体の特色のひとつでもある麦栽培は、地元のクラフトビール醸造所からお声がかかったことがきっかけでした。
「地元産の麦が欲しい」というニーズがあり、やおぷろの畑も空いていたということで麦の栽培は始まったのだといいます。

なりゆきで始まった麦栽培ですが、最初は平原に麦畑があるイメージで、畝を立てずにタネを撒いて栽培をしたのだそう。するとなんと、水が溜まって湿害が出てしまったのだとか。元々麦は乾燥地の作物であり、日本のようなジメジメしていて隣に田んぼがあるような場所では中々育てにくいそうです。

また数十年前までは鳥取にも麦を栽培する農家さんはいましたが、今ではほとんどおらず、教えてくれる人や機械を貸してくれる人は近くにいない状態。最終的には栽培、収穫、ヒゲ取り、そして最後の検品に至るまで全てを手作業で行うことになったのでした。手作業となると膨大な時間はかかりますが、生産部長である東さんは自宅に麦を持ち帰り、みんなで勉強したり話したりしながら麦のヒゲ取りを行ったことは、去年の一番の思い出になったとおっしゃいます。

そして地道な努力から栽培方法に改良を加え、今年は多くの麦を収穫することができたそうです。春の収穫作業は新しく入ったメンバーの歓迎イベントとしても開催し、麦に興味を持って活動に参加してくれる人もいることから、麦は『やおぷろ』にとって「顔」のような作物となったのでした。
今年からは新たに春小麦の栽培も始まり、麦を使った挑戦はまだまだ続いています。

▲左から二条大麦、六条大麦、小麦。林さんは今後、大学院で麦の湿害の研究をさらに行っていく予定なのだとか。

また、野菜の栽培においても一筋縄ではいかなかったこともたくさんあったのだそう。昨年の台風では近くの川が越水し畑が水没したことで、トマトや小松菜のような、ナス以外の夏野菜は全て失敗。さらに今年は収穫間際だったじゃがいもが全て猪に食べられてしまいました。かなりショックだったそうですが、強く育てやすい種類の野菜を栽培したり、電気柵を設置するなどして、失敗と成功を繰り返しながら少しづつ収穫量を増やしているのだそうです。

畑を見学させていただくと、収穫時期が近づいてきた玉ねぎ、成長中の枝豆やトウモロコシが植えられていました。畑には生き物の気配が感じられるような自然な雰囲気があると思っていたところ、なんと害虫がいないかどうかは手作業でチェックし、雑草もほとんど人力で除去しているのだとか。野菜の栽培にはほとんど農薬を使わず、なるべく人の力で解決できるように心がけているそうです。

▲主な販売先は地元スーパーや公民館。公民館で販売を行うと、応援も兼ねて地域の方がよく買ってくださるのだそう。

やっと利益が出るようになった今年、新たな団長を担っているのは現在3回生の飯塚さん。大学では農学部に所属していますが、実は専攻しているのは農業ではなく森林科学でした。

「せっかく農学部に入ったので、農業系のこともやってみたいと団体に入りました。時には農業に詳しい後輩に「肥料の撒き方がちがう!」と教わることも(笑)。初めは団長は無理だと思っていましたが、部門長にフォローしてもらいながら色々と学ばせてもらってます。大学では林業、団体では農業と、いろんな経験ができています」

そうおっしゃる飯塚さんにとって一番のやりがいを感じるのは、自分たちで一生懸命育てた作物を買ってもらえる瞬間。団体に入ったばかりの頃は右も左もわからなかったそうですが、自身で疑問点を調べたり指示をもらったりと努力を重ね、それが実って成功した時は本当に達成感を感じたそうです。

また、団体に所属するメンバーの忙しさはそれぞれで、負担に感じて農業が嫌いにならないように調整するのも団長の役目。
「以前コミュニケーション不足で幹部が揉めてしまったことがありました。感謝の気持ちを伝えるのはもちろん、言わなくてもわかるだろうと思わず、ちゃんと言葉にして伝えないとだめだな、と思い頑張っています」

今後は団体の安定した基盤を作るため、知名度を上げ、販売経路を広げていきたいと飯塚さんはおっしゃいます。学生団体として、いろんな観点から楽しく農業ができる団体を維持できるように、これからも尽力していきたいそうです。

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やおぷろ 林さん・飯塚さん・東さん

鳥取大学 学生団体

ライターのコメント

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ライター

中前朱理

実は麦の栽培をしているところを初めて間近で見たのですが、やはり鳥取で栽培しているところは少ないと聞いて納得。大変なこともあると思いますが、未来のために農業に取り組む学生さんたちを、陰ながら応援したいなと思いました。