柿畑を残す理由|明治時代から続く柿農家

岡崎ファーム 岡崎昭都さん

秋晴れの気持ち良い午後の日。

10月の柿畑では、可愛らしい女性2、3名が柿の収穫の真っ際中。「わー、いっぱい実がなってるなー」と、キョロキョロと周りを見渡していると、

「今の時期は、輝太郎(きたろう)っていう品種っす」

と、歩み寄ってきてくれたのが、岡崎ファーム・岡崎昭都(おかざきあきと)さんです。

  

岡崎ファームは、明治時代から続く柿農家。今は4代目岡崎昭都さんを中心に、輝太郎柿・西条柿・富有柿・花御所柿などの柿を750本以上植え、出荷をされています。

  

 

コンテナの中を覗いてみると、お尻を上に向けて並ぶ輝太郎柿。思わず、 「わー、大きい…」と声がもれます。収穫には、地元のママ達がアルバイトとして活躍されているそうです。

有機堆肥で生き物や微生物が作るふかふかの土壌に育つ柿の木。葉っぱも大人の手ぐらいの大きさが。人間と一緒で、居心地のよい場所作りが大切なんですね。

  

 

秋の旬だけ、スポットライトを浴びる柿。私自身、大変失礼ながら秋以外の季節はすっかり柿の存在は忘れてしまっています。

しかし、柿の栽培は1年を通して冬は剪定、雪落とし、霜対策。春から夏にかけては摘蕾・摘果、草刈り、水やり、その間に植え替え作業や圃場整備など、休む暇がないそうです。

「夏にやる花摘みも、ひたすらぶちぶちと取っていくんですが、途方がなくて泣きそうになるんです―― 」

この作業をしておかないと、小粒の柿が鈴生りになり、次の年は木が弱り実をつけません。柿の木は、豊作と不作が交互に来るとよく言われますが、そういうことだったのかと初めて知りました。

 

 

必要のない果実を採る摘果(てっか)。蕾や花をとる作業は摘蕾(てきらい)というそう。実らせたい果実を考えながら間引いていく必須の作業です。

木が休んでいる冬は、剪定や雪落としなど、寒い中での作業も多いとのこと。

  

  

ももくり3年、かき8年

  

「桃栗3年、柿8年って言葉あるでしょ?あの言葉通り柿は育つのが遅いんです。4年目以降にようやく採れ出して、まともに採れるのが7、8年後。それまでは、ただひたすら草刈りして、枝の誘引(紐などを使って上に伸ようとする枝を横にひっぱる)、水やり。その間は、一切お金にならないですからね」

岡崎さんが柿農家を継ごうとした時、そもそも柿は儲からないからやめた方がいい、と言う周りの人も少なくなかったそうです。

それでもやろうと思ったのですか、と訊くと岡崎さんはきっぱりと言われました。

「誰かがやって結果を出さないと誰もやらない。だから結果を出すしかない」

 

岡崎さんが現在やっていることは圃場の効率化。自動草刈りロボットのデモ機を使い、「夏場、高齢者の負担軽減に少しでもなれば」と草刈りのオートマチック化を実験中とのこと。

水やり用のスプリンクラーを設置したり、柿の木の畝と畝との間を広くとり、木の枝の高さも車が入れるように調整しています。

 

 

全力を尽くしたい

 

近隣では後継者がいない圃場も少なくなく「高齢のため管理ができなくなった柿畑をなんとかできないか」という相談も増えてきているそう。そこで、そこを借り受け、古い木は新しい木に植え替え、生産力のある圃場へと作り変えていっておられるそうです。

「どんどん管理面積が増えるので、自分の首をしめているようなもんです」

と、ちょっと困ったように笑いながら話してくれました。

  

「だけど、よかったこともあるんです。去年は強い霜でこのあたりの柿農家はかなり被害を受けたんです。さらに、ヘタと実の間に隙間ができる『ヘタスキ』も多かったんでひどい状態でした。だけど、僕は頼まれているものは全部出荷したんです。全体量が多ければなんとかなることもある。何かあった時に対応ができるように全力を尽くしたいんです」

  

11月下旬から12月中旬頃。八頭町では、葉を落とした柿の木が立ち並ぶ畑が延々と続き、幻想的な原風景が広がります。柿畑を横に見ながら走る「新因幡ライン(国道29号線)」は、日本風景街道に登録されています。

 

 

次に繋ぐため

 

岡崎さんは小さな頃から見てきたこの景色をずっと残していきたい ―― 、いえ、それを自分と地域の力でなんとか残していこうとされています。

現在40歳になる岡崎さん。

「今年植えているのに実がつき出すのが7年後、そん時47歳でしょ。柿の木育てるのは、ほんと気が遠くなる。だけど、地域の中から『柿農家をやりたい』という人が出た時、すぐにでもそのまま渡せるようにしておきたいと思ってるんです」

なんだかせかせかした毎日の中で、時間軸が全く違う柿の木から学ぶことはとても多いような気がしてきます。

  

最後に今後のことをお伺いしたところ、

「ここを柿の観光農園にしたいっすね。柿のもぎ取りとかできたら子どもも喜ぶんじゃないかなと思って」

終始気さくに、時折、地域への深い愛情を垣間見せてくださった岡崎さん。

道路沿いにも広がる柿ばたけに後ろ髪引かれつつ、コンテナいっぱいの柿をお土産にいただき、帰路についたのでした。

  

  

100歳を超えたお祖父様との素敵なお写真。お祖父様は西条柿をたくさん植えて育てておられたそうです。農園には100年を超える古木の柿の木があり、今でもたくさんの果実をつけるそうです。

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岡崎ファーム 岡崎昭都さん

〒680-0442
鳥取県八頭郡八頭町市谷335-1

ライターのコメント

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ライター

柳田 洋子

果物の中でも特に好きな柿のことを色々知れて嬉しかったです。
いつか、観光農園ができたときには柿狩りに家族やお友達と一緒に行きたいです。