農業は技術の総合格闘技|畑で育つ未来の人材①

やおぷろ 林さん・飯塚さん・東さん

「田舎といえば農業」

そういうイメージがありつつも、実際に地方で農業に関わっている若者は意外と少ないものです。
それは鳥取においても変わらない実態で、担い手不足や農地の管理など、穏やかな田舎暮らしの裏腹には農業問題を抱えている側面も。

そんな中、真剣に日本の農業の将来に目を向けて、日々活動を続ける方々がいました。
今回は鳥取大学の学生団体『やおぷろ』のご紹介です。

▲左から順に東さん、飯塚さん、林さん

取材に応じてくださったのは『やおぷろ』で幹部として活動を支える、団体創設者の林知輝さん(4回生)、2代目団長の飯塚達也さん(3回生)、生産部長の東麻衣さん(4回生)。こちらの団体では穀物や野菜の栽培、地元スーパーなどでの販売を行っているそうですが、改めて設立の経緯についてお聞きしました。

「学生が農業で面白いことをしたい、なにか挑戦したい、というやりたい気持ちを可能にするプラットフォームになることができれば、と思い『やおぷろ』という団体を作りました。具体的には野菜を作りたいという生産、そして野菜を売りたいという販売のふたつを行うことで、学生たちが総合的に農業に取り組むことができる団体なんです」

そう教えてくださったのは大阪出身で、現在は鳥取大学農学部で学ぶ林さん。大学には野菜を作っている学生団体は複数ありながらも、団体の共通の悩みは「売り場がないこと」。それを解決するため、自分たちで生産を行うことに加え、売り場としての役割を担う活動を始めたのでした。それが「生産・販売を総合的に考え、農業に挑戦したい学生を集めるプラットフォーム」である『やおぷろ』の始まりだったといいます。

また、『やおぷろ』では総合的に農業に取り組むため、小さな枠組みで役割分担し、団体の維持管理を行っています。現在は畑で野菜を作る「生産部」、団体を持続的に継続するためのお金を稼ぐ「販売部」、それをマネジメントし団体維持のためお金を管理する「会計部」の3つの部門に別れています。

▲活動に使用している畑は2反。団体に畑を貸してくださったのは、プロジェクトに参加する学生のおじいさんでした。

そして学生たちがそれぞれ自分のやりたいことを活かし、総合的に農業に取り組むような活動基盤を作っているのには理由がありました。

「今、地域を良くするためになにかするというよりかは、そのちょっと先。自分たちが技術や経験を生かして、今後の社会で何か地域の問題を解決できるようになることに焦点を置いています。だから、今やっていることは内面、自分たちに向けていることでもあります」

林さん曰く、農業とは「技術の総合格闘技」のようなもの。色々な技術が必要になる学問なので、大学で生産について学ぶ人、薬品について学ぶ人、地域との繋がりを学ぶ人など、団体では色々な分野を学ぶ学生たちが活躍しています。しかし大学で学ぶのはいわゆる座学で、知識としては要点ばかりを勉強している状態。実際にイチから農業をするとなるとわからないことだらけだそう。だから「やってみたいけどわからないところ」はたくさん調べて、実際にアウトプットしていくことで、はじめて経験として農業を知ることができるのです。

▲『やおぷろ』の生産物の中でも特に象徴的な麦。地元のクラフトビール醸造所との連携で栽培を始めた麦には、団体の思いが詰まっています。

団体での活動が始まって2年、所属するメンバーは今では20人を超える規模になりました。現在団長を引退した林さんは、学生団体という世代の循環が短期間で行われるものをいかに継続していくか、非常に悩まれていた時期もあったそうです。コロナの影響もあり思うように人を集められず、持続的にまわるしくみを作れなかった頃は団体をもう終わらせてしまおうかと議論したことも。

それでも、せっかくここまで団体を作って、これからどうしていきたいかというビジョンもあったことから、それを掴みにいかないのはもったいないと感じたのだとか。その後は厳しいながらも、楽しい・面白い・やってみたいという気持ちの部分を大切にし、メンバーをひとつの方向に束ねてきたのだそうです。

世代交代が行われる中、なんと今年、ついに黒字を出すことに成功したという『やおぷろ』。
そこにはたくさんの失敗から学んだ経験が隠れています。

「社会に揉まれて、揉まれて、やっとちょっと芽がでました(笑)」

なにもない畑からスタートした挑戦、そして団長としての苦難を乗り越えてきた林さんのこの言葉には、達成感以上にこれからの団体の成長を願う思いが込められているように感じました。
後編ではそんな彼らが実際に行ってきた活動や、野菜作りのエピソードについてご紹介させていただきます。

続きはこちら→〈失敗は成功の肥やし|畑で育つ未来の人材②〉

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やおぷろ 林さん・飯塚さん・東さん

鳥取大学 学生団体

ライターのコメント

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ライター

中前朱理

「農業問題」というと難しく聞こえがちですが、やおぷろの皆さんのように楽しみながら問題と向き合っておられる方々はとても素敵ですよね。学生団体×農業の組み合わせも、地方ならではの学び方のひとつだと思いました。