鳥取県の最東北端に位置し、日本海に面した海と山と温泉の町「鳥取県岩美町浦富」。
山陰海岸国立公園に近く、息を吸い込むと日本海の潮が香り、松葉ガニをはじめとした海の幸が豊富に採れることでも知られています。
この地で、漁業や農業を生業として暮らす方々に飲み継がれるお酒があります。明治40年(1907年) から100年以上、但馬杜氏の伝統的な製造方法で、その日本酒を造ってこられたのが高田酒造場です。
高田酒造場の代表銘柄である銘酒「瑞泉(ずいせん)」は、地元岩美町の天台宗吉祥院の山号「瑞泉山」に由来しているそうです。
山陰出身の私にも耳馴染みがあり、日本酒といえば瑞泉の名がぱっと頭に浮かびます。山陰を代表する日本酒として地元で愛され、全国の地酒ファンの方にも知られるお酒です。
高田酒造場のある岩美町は、多彩な海岸地形など、貴重な地形・地質遺産が残されています。それらを背景とした生き物や人々の暮らし、文化・歴史に触れることができる地域で、ユネスコ世界ジオパークに認定されています。
地元素材で作る真の地酒
清酒・瑞泉のふるさとは、山陰海岸国立公園のすぐ側。この一帯は大量の貝殻を含んだ花崗岩が堆積しています。
中国山脈に降った雨は伏流水となり、何百年もかけて砂の層で濾過されます。そして、ミネラル分を含んで湧き出る良質な水を、高田酒造場は仕込み水として使用されています。
この水は江戸時代以前から酒造に適した水として、古文書にも記されているのだそうです。
そして、原料米は地元農家との契約栽培による酒造好適米です。
高田酒造場では、原材料を地元で調達することを基本とされています。
そのため量を追うことはなく、少量生産で酒を作り続けていらっしゃいます。奥義を振るう蔵人たちにより瑞泉は、選抜から仕込みに至るまで真の「地酒」を強く意識して作られているのです。
酒造りに適した米が穫れ、良質な仕込み水があって、飲んでくれる人々がいる…そんな背景から高田酒造場の「瑞泉」は生まれました。
唯一無二の存在であり続けたい
流行に流されず、妥協を許さずに酒造りを続けて100年余り。
瑞泉は、浦富の地酒として「唯一無二の存在であり続けたい」という方針のもとで飲み継がれてきました。
鳥取の恵みをいかし、その適性を知り尽くした職人たちが少量ずつ丁寧に醸してきたお酒です。
山陰の地で産まれた自然の恵を、地酒として蘇らせたいという思いがあるからこそ、私たちはそこに惹かれてしまうのではないでしょうか。
味わいもさることながら、その背景にある浦富の自然と暮らしを感じる地酒。日頃の喧騒を忘れ、ゆったりとした気持ちにしてくれます。
機会があれば、山陰にお越しいただき、浦富の地酒を地元の肴と共に楽しんでいただきたいです。