「今晩の夜ご飯は、野菜たっぷりのスープを作ろう。」
私がそう思ったのは、スープ料理家の東條 真千子(とうじょう まちこ)さんのお話を伺った日のこと。
先日、アメリカ・ロサンゼルスにお住まいの東條さんとオンラインでお話をさせていただき、あっという間に東條さんと、スープのある暮らしの虜になりました。
▲東條真千子さんの著書『子どもと楽しむ季節のスープ ―あついスープはあついうちに、つめたいスープはつめたいうちに』 (東條さんのブログより)
東條さんがスープをよく作り始めたのは、お子様がまだ幼いころだったそう。
グラフィックデザイナーの東條さんは当時、毎日お仕事と子育てで大忙しの日々を送っていました。
お仕事も楽しく大好きで充実しつつも、大切な子供たちの子育て。
限られた時間の中で奮闘していたある日、東條さんが子どもたちのために作ったのが「すごく具沢山のお味噌汁」でした。
煮物や生野菜のサラダは食べてくれないけれど、加熱することで小さくなった野菜がたくさん入ったお味噌汁なら食べてくれる子どもたち。
「これはいいなぁ」と気づいた東條さんは、その具沢山お味噌汁をきっかけに、トマトスープやクリームスープなどを作り始めます。
いつでもあたためて、子どもだけでも食べられる。
そんな便利さも相まって、お料理が好きな東條さんはそれから様々なスープをつくり、スープで子どもたちを育ててきたと言います。
「スープを作ることが、うちにとっての健康・家族の笑顔などの大事なものを守る方法だった」と東條さん。
その東條さんにとっての「大事なものを守る方法」が、現在もスープ料理家としてお仕事をされていたり、食品添加物を使わずに作る”やさしいスープ”の商品開発にも繋がっているんですね。
▲白菜と白ネギのミルクスープ (東條さんのブログより)
▲ブイヤベース (東條さんのブログより)
東條さんは、幼いころにおばあちゃんが作ってくれた手料理のお話もしてくださいました。
おばあちゃんが作ってくれた手料理の味。お出汁をとって、地元の食材をふんだんに使った美味しい料理。
こうした「味の記憶」が、今になっても自分の食へ対する好みや考え方の基本となっているそう。
東條さんはそんなご自身の経験をもとに、幼い子どもたちが自分で包丁を持って、お鍋に火をつけて、スープを作って、自分で味わうことができる「こどもスープ教室」や「親子スープ教室」なども開催されています。
「僕が生きてきて、一番美味しいコーンスープだった。」
東條さんが開催されたスープ教室で出会った6歳くらいのまだ幼い男の子の一言。
東條さんはこの男の子の一言がとっても嬉しかったと言います。
自分で料理をして「美味しいな」と感じたら、それはその子にとって忘れられない思い出に。
東條さんのスープ教室には、「子どもたちに一度でも良いからそんな体験をしてほしい」 という優しい思いが込められています。
▲2019年に鳥取県で開催された こどもスープ教室の様子。(東條さんのブログより)
東條さんのお話を伺って、確かに私にとっても忘れられない「味の記憶」や、楽しかった食に関する思い出がたくさんあるなと気が付きました。
その思い出は、幼いころから母や祖母が作ってくれた手料理の味の記憶、また、お気に入りのお店の味やそこで友人と話したことなども。
そんな、やさしい・美味しい食の思い出がたくさんあるということがなんて嬉しく、ありがたいことか。
日々過ごしている中で当たり前のようにある「食」の大切さと楽しさを、東條さんのお話を伺い、再確認しています。私は食べることが好き!ということも。
そして同時に、自分にとっての「大事なものを守る方法」って何だろう?と考えるきっかけにもなりました。
その方法は、今すぐに見つけられるものでもなさそうだけれど、もしかするともうすでに自分の中で決まっているのかも。
今晩はそんなことをふんわり考えながら、野菜たっぷりのスープで温まろうと思います。
■ 東條真千子さんのブログは こちら から
< アメリカと鳥取と食文化|やさしい味の記憶② へつづく>
食習慣という言葉はよく耳にしますが、東條さんの言う「味の記憶」は、それと似ているようでもっと感覚的なものなのだろうと思います。幼いころからの色々な記憶や、今回東條さんのお話を伺って得た感覚もすべて、ずっと大切にしていたいなと感じました。