鳥取県八頭郡八頭町で、「1日1組で営業される古民家宿のオーナーが素敵ですよ。」と聞き、取材に行ってきました。
しっとりと小雨が降る中、車を走らせると一面に田んぼと畑で開けた視界の中に熊の親子が手を振っているイラストが飛び込んできました。「わー、出迎えてくれてる~」と嬉しい気持ちでたどり着いたのは、一日一組の貸し切り宿「Fam」さんです。
▲熊の親子のイラストが、「やあ!」と歓迎してくれます。
オーナーの北村直人さんは、2021年7月に宿をオープンして以来、お一人で切り盛りされています。北村さんが運営されるまで、この場所はバイクで来られた方用のドミトリー形式の宿でした。
前職で仲間と共に、この場所に関わり運営もしていた北村さん。
コロナ禍でこの場所を存続させるか、どうするかとなった時、「だったら、自分がやろう。」と決意されました。
▲北村直人さん。アウトドアも大好きで、冬はスキー場で働き、一年を通して遊びのフィールドを求め模索されています。
「僕は35歳までには独立したいと、ずっと自分の人生プランを周囲に話していました。宿をやるのをきっかけに前職からは抜けましたが、フィールドは同じ八頭町。八頭町を盛り上げたいという気持ちはずっと変わらないんですよ。」
八頭郡ご出身の北村さんは幼馴染の仲間と一緒に会社を立ち上げ、ずっと八頭周辺を盛り上げてこられました。
北村さんが独立をするとなった時には、仲間の間で衝撃が走ったそうですが、北村さんの根底にあるのは小さい頃から変わらない、「八頭が好き」という思い。
だからこそ、働く環境が変わったとしても常にこだわっておられるのが「このフィールドを最大限に活かすこと」です。
宿泊するだけで終わらせない、このあり余る程の自然をどうやっていかすかを常に考え、実行に移しておられます。
お客様を山や川へご案内したり、夜は焚火をしたり。
さらに、魅力を伝えるためには自分自身がまずは色々やってみよう!と考え、山に登って木を切り薪を作ったり、近所の椎茸農家さんの元を訪ね、一緒に作業をしたりされているそうです。
▲薪を作るのも北村さん。綺麗に木が並んでいる姿に、ほれぼれしてしまいました。
そして、北村さんが幼かった頃は、川でカヤックを教えてくれる人、山に詳しい人など、近所のおじちゃんが先生になって子どもたちに様々なことを教えてくれていました。今後はそんな「ご近所の先生たち」を巻き込めるような場所にしたい、と言われ、私もワクワクしてきました。
宿のコンセプトは「子どもが喜ぶ合宿所」。
お部屋は、2段ベットがあったり、可愛い里山を模したイラストがあったりと、遊び心が溢れた空間。
1棟貸切なので、2・3家族合同のグループで来られる方も多いそうです。確かに、貸切だと子どもたちが走り回って騒いでも気兼ねすることなく思う存分楽しめます。
そして、お部屋で過ごすだけでなく、広いお庭でバーベキューを楽しんだり、庭にあるピザ窯でピザを焼いたり、子どもだけでなく、大きくなった子ども(大人)も飽きさせない仕組みがいっぱいです。
▲二段ベットの上は、大人でも取り合いになりそうです(笑)。
▲お部屋の前には、のどかな里山のイラストが描かれていました。のんびり走る車を熊と鹿が見ています。
北村さんにとって宿をする魅力ってなんですか?とお伺いしたところ、
「お客様が笑顔で喜んでくれたり、ワッと驚く仕掛けを考えて、それを作ることが面白いですね。先手先手の気持ちでサプライズを仕掛けるのが自分のスタイルなので(笑)。この場所を通じて、お客様が自然の中でゆったりと日々の疲れを癒して元気になっていく姿が見えるのも嬉しいです。そして、この場所で様々なことを経験していただけたらいいなと思っているんです。まだまだ、このフィールドには魅力がいっぱいあると思っています。」
と、気さくな笑顔で語ってくださいました。
仲間や家族と、ここでしかできない自然体験ができる場所「Fam」。
この夏、私も北村さんが提案するフィールドへ家族で訪れたい、と思ったのでした。
▲北村さんお気に入りの景色は、 Famの向こうに広がる夕焼け。遮る高い建物がないので、天気の良い日はとても美しいそうです。<写真:Famのインスタより>
宿の名前「Fam」には、家族、仲間同士という意味が込められています。
Famさんにいると、実家に戻ったような懐かしさと、不思議な居心地の良さを感じました。一緒に行った人と過ごす時間を大切に、自然の楽しみを見つけに訪れたい場所です。