とある焼き菓子店で、スコーンを乗せたお皿が目に留まった。
絵付け皿と思ってよくよく見ると、練り込み技法でつくられた独特で可愛らしいミモザの絵柄。
聞けば、作家は鹿野在住という。
早速紹介してもらい、鹿野出身の新進の女性陶芸作家・田中ちあきさんを訪ねた。
浜村から山陰道を越えて、鹿野城跡から末用川上上流に車で2分ほどの小さな集落。
田中さんは2017年に岡山県からUターンし、祖父母宅の一部を改装して翌18年から工房を構えている。
練り込みとは大学時代に出会い、卒業後も社会人生活の傍ら作陶活動を続け、ポップでカラフルな世界観を独自に築き上げた。
顔料を練り込んだ粘土を組み合わせて模様を描く練り込み技法は、金太郎飴のように裏表に模様が現れる。
「心がけているのは大人でも持てる可愛さ。器の裏表、カップの外と中で模様が現れる練り込みの良さを、デザインで生かせれば」
と鹿野の山間で作陶活動に没頭する若き才能は、練り込みの可能性を模索していた。
鳥取市内では「gallery shop SORA」で販売中。
出典:さんいんキラリ 冬号 No.46
さんいんキラリ編集長より
シンプルながらユーモアのある田中さんの器。金太郎飴のようにスライスした時にうまれるモチーフの歪みは、ゆるくてポップ、可愛らしい表情になる。子どもたちにとって、この器に盛られたら好き嫌いがなくなりそう。