暮らしを提案する「くらしのビレッジ」

出西窯代表 多々納 真さん

<前回の記事はこちら→進化し続ける出西窯の未来

昭和59年から始まった「炎の祭り」は2017年に役目を終え、健やかで自分らしい生活スタイルが提案でき、通年で楽しんでもらえるようにと「出西くらしの village」に姿を変えた。

ベーカリー&カフェ「ルコションドール出西」のオープンだ。

十数年前から出西に店舗設置を切望していた有名アパレル会社社長の思いに、真さんはなかなか応えられないでいた。

そこへ、鳥取市内のパン職人倉益孝行さんが現れ、彼が作るパンの美味しさと自分たちと同じ信条に出会って一気に実現へと向かった。

倉益さんは「出西窯はこの地域の誇りであり、そこに私たちが加わることによって、もの作りのプロフェッショナル集団エリアという、一つ上の段階を目指せるのではないか」と言う。

すでに、カフェ側からの提案でコションドール・バージョンの器も誕生し、陶工からはカフェの味や器の使い方に厳しい意見がかえってくるなど、相乗効果も現れている。

全員で考えた「出西くらしの village」の名のもと、同じ方向を見据えて進むさまざまな作り手が、ここに集まる基礎ができあがったといえる。

「器と食と衣の3つが融合すれば、焼き物に興味がなかった若者たちも大勢ここに来るようになり、中には焼き物屋になりたいと思う人も出てくるかもしれない」と真さん。

イベントの発想や実行もすべて若いスタッフに任せ、「失敗の中からも学んでくれる」ことを願いながら、次世代への大きな期待を寄せている。

出典:さんいんキラリ 夏秋号 No.42

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出西窯代表 多々納 真さん

出西くらしの villadge
住所/島根県出雲市斐川町出西3368
https://www.shussai-village.jp/

昭和34年島根県出西に、出西窯創始者のひとり多々納弘光と出西織創始者の桂子という手仕事の工人夫婦の長男として生まれる。大学卒業後、陶工として出西窯に入る。第2世代のリーダーとして、40歳頃から共同体のシステムを時代合うよう少しずつ変えていく。平成27年株式会社出西窯の代表となってからも、暮らしに寄り添う器を作り続ける陶工である。

ライターのコメント

民藝の巨匠たちの指導のもと共同体的な民窯として創業。
いまや創業者の孫世代が中心となったプロフェッショナル集団で、現代の暮らしにあったシンプルな形とメリハリがきいた色彩の器は、新作民芸の旗手的存在です。