Travel through the old streets ― Tottori
お金儲けはできない。それでも住みたい町
丸山伊太朗さん
若桜街道商店街の一角に、一風変わった店がある。1階のカフェは本やリーフレットなどの紙ものが場所を占め、上階のギャラリーは古い瓶や食器・雑貨などで埋め尽くされている。カオス感あふれつつ、でもなんだか不思議と心地よい。それはオーナーの”丸さん”こと丸山伊太朗さんの雰囲気そのもの。柔軟で、老若男女問わず受け入れてくれそうなのだ。
金髪がかっこいい丸さんは、東京・中野で34年続いた「小さな無国籍食堂カルマ」を立ち上げた人だ。
料理研究家の高山なおみさん、枝元なほみさんらを輩出した伝説的な店で、2014年、惜しまれつつ閉店した。その後は都内でシェアカフェを運営しつつ、地方にも拠点を探し、元スタッフとの縁でtottoriカルマをスタート。当初は東京と鳥取を行き来していたが、3年前に鳥取に腰を据えた。
1階のカフェはイラストレーターの絵葉書やリーフレット、本、雑貨などが場所を占める。
地元建築家の協力を得て、隣の智頭街道商店街の古い建物を改修し、自宅兼私設図書館「トりんく まんまる」を一昨年開設。壁一面をぎゅうぎゅうに埋め尽くす蔵書は圧巻だ。大きなコンクリートのまん丸のベンチが、子どもから大人まで、町のみんなを温かく迎えている。本のラベルに指を伝わせ、好みの一冊を手に取って思い思いの時間を過ごす— そんな情景が目に浮かんだ。
智頭街道商店街の「トりんく まんまる」。図書室の中は集めに集めた蔵書がぎっしりと並ぶ。すぐそばを袋川が流れる。
出典:さんいんキラリ 秋号 No.50
〈つながりの密度を求めて|鳥取を旅する② へつづく〉
書店が少ない中心市街地で、無類の紙モノ好きが高じて蔵書を一般開放している丸山さんは“無国籍料理・シェアカフェ”を国内で最初にはじめた人。年齢不詳の若々しさで、飄々と新たな街で仲間たちとの繋がりからカフェや図書室を開設した丸山さんに注目です。