欠けや割れを漆で繕い、金や銀で化粧することで、うつわに新しい「景色」が生まれます。
この修繕法は“金継ぎ”と呼ばれる漆の伝統技法。
茶の湯に由来する、日本固有の美意識を込めた修繕法です。
島根県出身の金継ぎ師guu.さんのお仕事は、そんな金継ぎを用いて器を修繕したり、
金継ぎ教室を開いて生徒さんに金継ぎをお教えすること。
(以下、guu.さんと称させていただきます)
HPを訪れると、繕った跡が美しい器の写真、そして興味深い金継ぎについての様々なお話との出会いがありました。
そんなguu.さんが金継ぎに出会ったのは漆造形分野を専攻していた学生時代。
初めて金継ぎで修繕したものは、アルバイト先のお猪口でした。
誤ってお猪口を割ってしまったguu.さんに対し、
「漆やってるなら金継ぎできるんじゃないの?」と
お店の方が言われたことが金継ぎに触れるきっかけになったのだそう。
「直して持っていくとお店の方はもちろん、
使うお客様もとても喜んでくださったのが印象的でした」と、
その時の思い出を話されました。
▲現在は埼玉県在住ですが、オンラインで講座を開いていおり、全国の方に金継ぎをお教えしているそうです。
学生時代に出会い、今もなお仕事として続けられる金継ぎについて、
guu.さんが魅力を感じているのは「壊れたものを直す」というところ。
「金継ぎというと、溶かした金でくっつけている、と思う方も多いのですが、
金を使うのは本当に最後の最後、装飾だけ。
本当は金がなくても、漆だけで十分使えるまで直せるのです。
金継ぎの主な材料は漆や小麦粉、石粉などの自然物です。
直す作業をしていると、「今まさに自然そのものが手の中にある」と感じられて、
自分の中では癒しになっています」(金継ぎ師guu.さん)
金継ぎというのは華やかに見えて、
実は自然のものだけを使った素朴な技法とも言えそうです。
guu.さんの直した作品を見ると、その素朴さの中にある優しさや温かさ、
そしてこれからも使っていけるとようにという思いを、本当に大切にされているように感じます。
また、今後の金継ぎの教室では、いろんな方にとって当たり前で身近に
ご自身でお直しができるようにお教えしていきたいと、
これからの目標もお話されました。
もし器を割ってしまった時、「処分する」でも「新しいものを買う」でもなく、
「直して使う」という選択肢が自分で当たり前に選べるようになったら…。
きっと食器棚には、綺麗な器も金継ぎをしながらずっと使っているお気に入りの器も一緒にずらっと並んでいて…。
想像しただけでもワクワクするような、素敵な暮らしだと思いました。
〈お直しは使うために|金継ぎのある暮らし② へつづく〉
#手仕事
今回金継ぎ師guu.さんのお話を伺い、大切な人に頂いたコップを不注意で欠けさせてしまった時のことを思い出しました。
絶望しながらも直し方を調べ、金継ぎという方法があることを知り、藁にもすがる思いで私も挑戦してみたのです。
結局その時はあまり綺麗に直せなかったのですが、もしguu.さんのように綺麗に直せたらもっと素敵だな…と素人ながらに憧れたのでした。