鳥取県鳥取市の老舗商店が並ぶ瓦町商店街、近くを流れる川からの風が心地よい、コトとモノの店【BRUN×WORKS(ブランワークス)】さん。
ステンドガラスがはめ込まれた扉の向こうに見えるのは、作り手の気配を感じる生活道具、ヨーロッパの片田舎の教会で誰かが座っていたであろうアンティークチェアなど、人の息遣いが感じられるものたち。
約束の時間より少し早く着いた私は、嬉しい溜息が出るのを抑えきれず、気になった器を手に取ると、おおらかに包み込んでくれるようなやさしさがふわっと押し寄せてきます。
時間が経つのを忘れ夢中になって色々なモノを見ていると、「いらっしゃい。」とオーナーの石田幸子(いしだゆきこ)さんが、やさしく声をかけてくれました。
▲木枠の棚の中には所狭しと生活雑貨が並んでいます。
石田さんが雑貨店を始められたのは29年前。
「雑貨店を始めたきっかけは何ですか?」とお伺いしたところ、幼少期のことを語ってくださいました。
「実家の裏にお寺があって、そこに染色家がいらっしゃったのよ。帯や着物を染める、『モノづくり』をずっとそばで見てきたの。私も、たまに遊びで※ろうけつ染めをさせてもらったのよ。」
その体験が鮮烈でした。
※ろうけつ染めとは
生地に溶かした蝋を塗ることで、その部分が染まらないようし、そのほかの部分に染色を施す伝統的な染色技法です。
そして、現在のお店がある瓦町商店街で生まれ育ったことも大きかったと石田さんは言います。
商店街では畳屋、建具屋、桶屋などが連ねており、店主たちは、軒先でいつも何かを作ったり修理しながら商いをしていました。
モノを「売る」と「作る」が同居した環境で生まれ育ったこと、
染色家との遊びの延長にあったモノ作り、
さらには昭和7年創業の日本で初めての民藝専門店「鳥取たくみ工芸店」がご自身の生活圏内にあったことが大きかったそう。
学生時代から、器や生活雑貨が大好きで通い詰めておられたとのことなので、その間に感性が磨かれていったのでしょう。
▲老舗店舗が連なる瓦町商店街 | 石田さんのご実家はここの商店街で、作業着などを作る工場を営んでいました。カスリの布からモンペなどを作っているのを見て、モノができることは簡単ではないことに気づいたそうです。
完成されたものだけを目にしていると、「誰かが作っている」という当たり前のことを忘れそうになります。
しかし、ちょっとだけ想像力を働かせ、「【モノ】と【ヒト】は常に結びつき、イコールなのだ。」と感じると、とたんに見え方が変わってきます。
▲ ベトナムの方が描かれた龍の模様の器たち。一つひとつ顔つきや模様が違います。(ブランワークスのインスタより)
▲ 手編みのカゴバッグ。下から3段ぐらいは花編み、そこから上は石畳み編みというそうです。(ブランワークスのインスタより)
石田さんとお話をした中で、とても印象的な言葉があります。
魔法でモノはできない、どこかで誰かが作っている。
モノができる背景を想像すると、修理してでも長く使い続けるー。
そんな思考に変えることができます。
作り手の気配がするモノが多く集まるブランワークスには、石田さんのモノ作りへのリスペクトが詰まっています。
▲石田さんが現在お住まいの鳥取県八頭郡智頭で作られている、栃ようかん。地元の良い品を伝えたい、と智頭の品々も並んでいます。
オーナーの石田さん、そして長年働いておられるスタッフの方は、いつも寄り添うようにたくさんの方のライフスタイルを作ってこられました。柔軟な発想力をお持ちの石田さんのルーツをお伺いできればと思っていたので、今回はたくさんお話ができてとても嬉しかったです。