前田農園(まえたのうえん)さんの加工品は、無添加で全てが手作り。
自家製野菜を取り入れた、ごはんのおともや調味料を製造されていらっしゃいます。
前田農園さんのある鳥取県北栄町の特産品と言えば、大栄西瓜・砂丘長芋、ミニトマトやホウレン草など。
3代目・前田修志(まえたしゅうじ)さんは、これらの野菜たちを手間暇かけて愛情いっぱいに育てられます。
そして修志さんが育てられたお野菜を中心に、奥様の純子(じゅんこ)さんが加工品をつくります。
▲(写真:前田農園さんHPより)前田農園さんの畑です。主に大栄西瓜、後作としてミニトマトやホウレン草。
他にもさつまいもやらっきょう、砂丘ごぼうや白ネギも栽培され、加工品に使われます。
▲前田農園・3代目の前田修志さんと前田純子さん。
前田農園さんの加工品作りは野菜のカットから瓶に詰めて発送するまで全て手作業で、目の届くところで行われています。
近年では、こうしたこだわりや商品の美味しさが注目され、テレビや雑誌などのメディアでも数多く取り上げられ、県内のみならず全国から注文が来ます。
受注が増えた現在でも、ひとつずつ、丁寧に製造し、お客様のもとにお届けされています。
▲加工部屋は2つ。野菜をカットしたり火を使う部屋。瓶につめたりラベルを貼ったりする部屋。加工部屋は修志さんが作られたとのこと。
この日は『ごぼう肉みそ』と『甘麹醤しお』が並んでいました。
とあるシェフとの出会い
加工品づくりを始められたきっかけは、前田さん曰く「料理人業界では伝説と言われているシェフ」との出会いだったそう。
元々化学物質や農薬が合わない体質だった純子さん。お得意の料理を生かして無添加の手作りのお弁当屋さんをされていたそうです。
お弁当屋さんを5年ほどされた後に、シェフの作り出す味に衝撃を受け、シェフの経営する料理教室に通い始められます。
以前から加工品の販売を新しく始めたいと考えておられた修志さん。シェフの技を学ぶため、一緒になって料理教室に通うことになりました。
こうして、シェフのもとでスパルタ料理修業はスタートしました。
ものさしを置いて7mmの幅で食材を切りつづける、お野菜の水のきり方、中華鍋での野菜の炒め方…。
シェフの味を100%再現するため。1秒、1mm、1cc、1g、1度、、、。妥協の許されない、厳密で緻密な世界観だったそう。
「商品ひとつひとつ、100%シェフのレシピを正確にコピーし続けることで、“ほんものの味”を皆様にお届けしたい。」
この思いを胸に、シェフのスパルタ修業にチーム一丸となってくらいついていったそうです。
そして、3年間の猛特訓を受け、食品部門を立ち上げられました。
お話をされながら時折、上を見上げては「ほんと大変ですよ…(笑)」と、呟く修志さん。その言葉に微笑む純子さん。
そうは言っても、今でも送ってこられるシェフのレシピを広げて楽しそうにお話する姿に、3人の信頼関係が見えます。
▲シェフのレシピ。ぱっと見ただけで工程の緻密さが伝わります。今でも思いついたレシピを送ってきてくださるそう。お手紙みたいです。
深すぎる味のわけ
前田農園さんの『ごぼう肉みそ』を初めて食べた時、深すぎる贅沢な味に驚き、ごはんがとまりませんでした。
なにがはいってるんだろう、と前田農園さんの商品の成分表を見るとびっしり。
それもそのはず。
醤油やソース、みそ、こうじなど、商品に使用する調味料もほとんどが一から手作りされたものだそう。
そのため、一つの商品をつくるのに1日では完成できません。砂糖も塩も油もレシピごとに使い分けているそうです。
この瓶詰めに努力と思いとこだわりとが凝縮されていると知ると、あれもこれも食べたくなってしまってそわそわしてしまいます。
「調味料で添加物がはいっていないものはすごく珍しい」とお客様にも喜んでいただけると純子さんもにっこり。
▲『ごぼう肉みそ』ラベル裏面の原材料の表記。数えたらなんと26種類もの材料が…!お味噌だけでも4種類も使われていました。
“ほんもののおいしさ”から未来につなげる
修志さんの畑でとれた、割れて販売できないトマト。はじめはそのトマトをケチャップにして販売されたそうです。
ところが、「人にすぐ真似されるものは長続きしない。世界に通用する品質でオリジナルな物をつくろう」というシェフ。
その言葉に胸を打たれ、野菜の素材を引き立てるオリジナルのご飯のおともや調味料をつくりたいと考えるようになったそう。
今も新しい商品を企画しているとのこと。例えば、1スプーンでもいれたら味がグンっと良くなるような調味料など。
ちょっとの工夫で小さなお子様からお年寄りの方まで、いろんな方にご家庭用として使って、食の楽しさを知ってもらいたいと願う修志さん。
「農家は自分がつくった野菜を美味しいですよというところまでしかできない。加工を始めたことで、野菜を作ること、料理をつくること、食べることをくっつけることができた。そのキーワードが調味料だったんです。」
農林漁業生産(第1次産業)と、加工・販売(第2次、3次産業)を一体化させることで、新たな産業を生み出す第6次産業。
前田農園さんは、土づくりからこだわったお野菜を一流シェフのレシピで調理することで、“ほんものの味”としてお届けされています。
「おいしい!」の体験や、食の楽しさは、暮らしの豊かさに気づき、地域と触れるきっかけかもしれません。
野菜を作る、おいしく料理する、食べる。この循環で農と食をつなげ、広がる未来になればと思いました。
「20年はやっていこう。その時間の中で周りの方たちに喜ばれる方向に動いていく。前田農園の“ほんものおいしさ”を知ってもらって、食が豊かになるような手作りの調味料をお届けしたい。」
そう楽しそうに話す修志さんと純子さん。
前田農園さんの作りだす“ほんもののおいしさ”とともに、鳥取の農業と食が広がっていってほしいです。
#鳥取 #手作り #作る人 #育てる人
お2人が食づくりについて楽しそうに話されている姿が印象的でした。前田農園さんシリーズを全制覇しようと企んでいます。