生きた証を作品に|知恵と技の日用品①

lore + needles 濱口 恵実さん

以前、取材中に地元の方から智頭町に革工房があると聞きました。そして、ふと目にした作品に「なんて洗練された作品なんだろう」と心奪われました。

  

lore + needles 包 – tsutsumu – シリーズの “名刺 / カード入れ”

 

  

山間の美しい環境で制作

 

こちらの作品を作られているのが、lore + needles(ロー・アンド・ニードルズ)濱口 恵実さんです。

濱口さんが、智頭町に移住したのは4年ほど前。それより前は神奈川県や海外、各地を転々とされていたそう。

「ようやく、ここに落ち着きました。」

とおっしゃる濱口さんは、智頭町での生活がとても気に入っているそうです。

▲昔の蔵を改装して工房に。しっとりと、とても落ち着く空間でした。

 

無駄を出さない

 

濱口さんは、以前のお仕事で革を手染めして製品にする染色チームに所属しておられたそう。その後、智頭町に移住をきっかけに lore + needles を立ちあげました。自分で革を扱う上で濱口さんが、大切にしていることがあります。それは、食肉や獣害の副産物としてできる革を作品に使用するということ。そして、なるべく革を無駄にしないことです。

命を大切にしたい、という思いからのことでした。

 

▲作品を作る時に出る端材なども、本のしおりやワッペンとして使用されています。

  

 

生きた証を残す

 

革を製品にするときには、1枚の大きな革をどのように使うかを決めて裁断する「型入れ」の作業があります。

動物たちの生前のキズ、シワ、血筋、虫刺されの跡など、そういった生きた証を含めて作品にしたいと思っておられる濱口さん。商品として支障がない限り、なるべく革を廃棄することなく型入れを行うように心がけておられます。

 

「生前の傷は生きた証。力強くて美しいなと思っていたので使いたいとずっと思っていました。怪我の治った後とか、ワイルドでかっこいいんです。」とおっしゃいます。

例えば、喧嘩の傷跡を見ると、「この子は暴れん坊だったのかな」とか、背中に細かく擦ったような跡がたくさんついていたら「痒かったんだな」と、思わず想像が膨らむそう。常に命に感謝しながら制作されています。

 

▲革の裏側から見える、筋のようなものは血管の跡。生きた証が革にはしっかりと残されています。

 

使う側の想像力で、愛着に

 

また同じく、鹿革も獣害の副産物としてできたものを使用されています。野生を生きた鹿の革は、ワイルドで部位によっても表情が全く違うそう。手触りや見た目の違いをそれぞれ楽しみながら制作することで、作品への思い入れも生まれます。

使う側も同様のことが言えます。

生きぬいたものへ敬意を持ち想像力を働かせる――。そうすると、作品への愛着がさらに増す気がするのです。

 

#鳥取 #手仕事 #民藝

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ライターのコメント

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ライター

柳田 洋子

お話をお伺いして、モノとしか見ていなかった革製品に対して、相棒のような気持ちが芽生えました。副産物として出る革を余すことなく使うー。その考えに、強く共感します。

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